2006年10月2日:発覚パート2

とはいえ、しばらくはいつもと変わらない生活が続く。ユウと添い寝しているうちに朝になりトラに起こされる、変わらない生活。と、思っていたのに、おかしなヒトがひとり。顔を合わせるたび、異常な笑顔になる男とも一緒に暮らしていた。そして、もともと優しいほうなのはわかっていたが、なんていうか……バカ優しい。 気持ち悪いくらい ありがたいことだ。
まずは、バイクを売ると言いだした。「おれにとってバイクは趣味じゃない。人生だ」といっていた人が、だ。そして、お団子たちのトイレ掃除役を買って出た。すぐにオエーっとなるからできないと拒否し続けていた人が、だ。売ったり買ったりまったく忙しい。忙しいくせに、「ありがとうね。ちよもがんばるよ」と言うと、「いいから、いいから。お れ が がんばるから」と、また異常な笑顔を見せる。最初から飛ばしすぎたら、もたなくなるんじゃないかと心配なほど。本当にありがたい。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
いつも通り仕事に出て、いつもより少し動作をゆっくりにしながら、それから、少しくらいお待たせしてもあせらず、あまり周りのことは気にしないようにしながら、赤ちゃんを最優先にして行動した。すると、これまでどれだけ気を使って無理をし過ぎていたかがよくわかった。そんな中で、ちゃんとおなかに落ち着いてくれて、本当によかった。ありがとう、とおなかに言う。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
夕方、妹ふたりに付き添ってもらい(というか連れて行ってもらって)病院へ。ふたりともそこで産んでいる先輩なので、頼もしい。
受付時間ぎりぎりだったが、なんとか間に合って、診てもらえた。
尿検査・体重測定・血圧測定のあと問診・エコーで、「妊娠ですね」と言われる。本当は、聞いておきたいことがたくさんあって用意していたのだけど、続けて「筋腫がありますねぇ」と言われ、頭が真っ白になってしまった。内診中、ズキリと痛みがはしる。この痛みはいつものことだし、長い間ずっと付き合っている。でも、5年くらい前に2度診てもらっていて、なんでもないと診断されたから、それから、すっかり放っていた。
「筋腫って……えっと、どうしたらいいんですか?」と聞くと、赤ちゃんのいるところと同じ場所にあるから、今は、どうすることもできないとのことだった。「いずれね」と、おっしゃるので、「それは、出産した後で、手術しなくちゃいけないということですか?」と聞くと、「うーん、まあ、いずれね。(と、カルテを見る)いや、いずれって言ってももう32だからねぇ」……せ、先生がいずれって言ったんですよ? まあ、そういうことらしい。
そして、筋腫があると、流産や早産しやすくなるとのこと。でも、同居していくしかないのだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
妊娠がわかったとき、これからは、不安感だけじゃなく、怒りや憎しみの感情も心の中に持たないように暮らしていこうと決めた。だから、不安がらないようにすることにする。筋腫(しかも相手は双子らしい)に対する怒りや憎しみも押し殺そう。筋腫ちゃんズ、どうかいい子にしていてね。うちの子に意地悪しないでね。
てるおさんが、いい話を思い出してくれた。がん細胞とゲームで戦う男の子の話。調べたら、Ben's Game だった。イメージで、変えられることって確かにあるはず。「ちよは、筋腫が小さく小さくなるように、イメージしてね。おれは、ちよのおなかが大きく大きくなるようにイメージしようっと」と言ってくれる。オー マイ ゴット!なんだコイツは!! 神様以上の救世主。ちよは、幸せ者なのです。