14歳
みんな芸能人とかにキャーキャー言ってた。
正直、まったく興味がもてなかったんだけど、あぶない刑事のドラマは好きで、どっちかというと館ひろし派だった。
3年に館ひろしにそっくりな人がいるって。
いっしょにキャーキャー言ってみた。
楽しくなってきた。
その人のこと、なんにも知らないけど、そうやってるのが楽しくて、「追っかけ」してた。
やりすぎた……。
目立ってしまった。
付き合うことになった。
で、『思い出』へ。
・・・・・・・
すごいことに気がついてしまった。
わたしは、先輩を好きじゃなかった。
彼を忘れるためだけだった。
その時は、にわかに回りが敵だらけになって、「いくら他の子も好きって言ってるからって、好きなもんはしょーがないじゃん」って開き直って、好き好き言ってたけど。
中学生って、そんなことするんだ。
・・・・・・・
この際だからぜんぶ書こう。
3年の冬休みに先輩と別れたあと、卒業式の日に、同級生の男子に告白して付き合ってたけど、また、すぐ別れた。
先輩とは、「こたつの中で、いきなり手を握ってきたから」という理由で、同級生とは、「今度○○で、喧嘩する」と聞かされて、なんじゃそりゃ? と思って止めたのに「男には、やらなきゃいけないときがある」とか言って聞いてくれなかったからという理由で別れた。
あとから知ったのだけど、その喧嘩の相手は、例の彼だった。
中学を卒業したときに、彼も施設を出てて、電話をもらった。
一度、たまり場になってた友達の家でたまたま会ったこともあった。
そのときは、びっくりしすぎて、泣きそうで、ちゃんと話せなかった。
何がどうなって、喧嘩しなきゃいけなくなったのかは、いまだに知らないけど。
・・・・・・・
彼とは、その後も、ずっと連絡を取り合ってた。
わたしが、独り暮らしをはじめた21歳の頃まで。
母さんが「家を出たんですよ」と言って以来、連絡が取れなくなった。
彼は、17歳のとき、地元をおわれて九州に行った。
昼も夜も働いて、いっしょに逃げた彼女を守っていたけど、あるとき家に帰ったら、手首を切って自殺してたと話してくれた。
「もうすぐ高校卒業だね。オレにできなかったこと立派にやって、そんな子が元彼女だなんて、オレは誇らしい!」って。
高校卒業するだけなのに。
そして、バカみたいな花束を贈ってくれた。
「ひとりでは持てないくらいでかいのをって頼んだら、とんでもない請求が来たから、毎日カップ麺食べてるよ」と笑ってた。
「うちだけじゃ飾りきれなかったから、ご近所にも配ったよ。彼氏も手伝ってくれた」と話した。
「もう一回付き合おうっていったとたん消えちゃったから、うちら別れてないねぇ。二股?」と言ったら、「そうだ、おまえはオレの女だ」なんて笑ってたけど、このことでケンカにならないか本気で心配してくれて、「彼氏と仲良くね」と言ってくれた。
岩国弁で話ができる人がほかにいないから、わたしがいるって思うだけで救われるって。
嬉しかったけど、悲しかった。